記憶の渓
秋の連休が連続する9月。
このところ・・・涼しさを連れて、秋雨の前線が東北上空を幾度も通過して、、、この連休中も北日本の大気の状態は不安定なようです。
宮城県内の山女魚釣りも 9月末に迎える漁期シーズン終了 への カウントダウン・モード に移行し、、、さらに川では、秋雨による増水に誘われ水生昆虫の秋季の羽化活動も始まって、、自分の中では・・・本格的な川通いで・・・この9月も忙しくなりそうです。
先日は、、、夏季限定の鮎友釣り師から毛鉤釣り師へと「釣りの衣替え」を果たした 中国料理「 楓林 ~ふうりん~ 」(JR長町駅前) のマスター・S氏とお店の昼休み時間を利用して長々の毛鉤釣り談義。。。
S氏と釣りネタを話題の枕にしてたら、毎度・・・昼休みが2時間では足りないんじゃないかってくらい。。。あーでもない、、、こーでもない、、、と。
そんな釣り談義の最中 『・・・マスターがこの秋、訪れてみたい渓・・・があれば、事前に自分が偵察してきますよ。。。』・・・なんてハナシになり。
そこで出てきたS氏のリクエストが 広瀬水系 「 大倉川 ~某~区間 」だった。
自分にとっては、思いもかけず、、、出て来た渓の名前。
学生時代に親しくしていた音楽仲間が、いつの間にか毛鉤釣りを始め、、、そして初心者にもかかわらず単独で険しいこの渓に通うウチ、、、増水していたある日、ウエーダー姿で足を滑らせて流れに飲まれ・・・儚くなった・・・因縁の渓。
それ以来、、、どれだけ良い情報が入ろうとも、、、この渓を意識的に避けるようになり。。。もう、20年にも。 そんな自らの記憶にフタをするように・・・深く沈み込んでしまった渓 。。。
毛鉤談義に盛り上がるS氏はそんな事情があるとはつゆ知らず・・・ 「 あの区間なら、いいかもね。 どう ? 今頃の大倉川なら、良い筈だよ。」。。。
■ 渓の遡行 (川歩き) は、事前に出来るだけ渓の入退ポイント情報等を集め、しっかりした足ごしらえと万一に備えた装備、自らの経験と遡行技術、そして当日の体調、なによりも流れの水量と天候により、、、入渓の可否を判断ください。 一山越えれば周辺にも良い渓の情報はあるはずですから、無理は禁物です。
■ 靴底のフェルトが5分以上減っているウエーダー・ウエーディングシューズの着用は、冬道のスタッドレスタイア同様、フリクションが取れず大変滑りやすくなっています。 シーズンももう少しで終わりだから・・・そんな理由で張替え交換を怠り、大怪我を招いている事例は沢山見聞きしています。
■ 今回の 大倉川 はひとたび出水すると、減水後も遡行の際の川底はたいへん滑りやすい浮石が多くなっており、渓相も含めて <渓が険しい状況> となります。 万一、流れの中の危険な場所で転倒し、プールの連続する水圧の強い冷たい渓水に流された場合を考えると、動き辛いウエーダー姿はお勧め出来ません。
■ 広瀬川水系では市街地に至るまで流れ周辺が全て、クマ出没地帯です。 今回の 大倉川 は支流を含めて、特にクマ・イノシシ出没情報が多いエリアです。 クマ避けの装備を忘れずに。
渇水する大倉川のプール・ヒラキの岩陰に遊ぶ 小型の山女魚とその下手の小型の岩魚 を橋の上から眺めている。。。
西方の奥羽の山並の上空には分厚い積乱雲がそびえているが、、、今しばらく秋の日差しは続きそうだった。。。
記憶に沈んでいた 大倉川 の名を聞いて、「イイですね~。」と相槌は打ったものの・・・・・何か理由を付け、行かないで置く・・・・・のも一つの方法だった。
それでも、、、あれこれ「大倉へ行かなかった言い訳」を思案しながら、、、秋晴れの下で釣り支度を載せたクルマを走らせ、、、道々懐かしい流れまでの風景を辿りながら・・・・・ 20年振りに大倉川の例の入渓点まで。。。
この橋と周辺道路は新たに掛けられたようだったが、、、深い河畔林に囲まれた流れの面影は20年も昔のまま。。。
ああ・・・ あの頃は良い魚が沢山毛鉤に出たっけなぁ。。。
そう回顧するウチ・・・ 山女魚釣り師のココロに カチリ・・・ とスイッチが入り。。。
心の中で手を合わせ、、、古い記憶にいる仲間へ「 すまんが・・・この大倉の流れにふたたび山女魚釣りしてみるから。。。 」と呼び掛けている。
川辺で今一度、、、自らの足ごしらえと装備を確かめて、、、、、大倉川の流れへ一歩一歩、、、静かに浸透してゆく。。。
あせらず、、、着実に、、、 険しい渓なのだと。。。強く意識して。。。
普段にも増して 慎重で丁寧な遡行 を心掛けていたせいか ?
ウエーダー姿だと普段の水位でも 通らず となって、大きく高巻かなければクリア出来ないだろう・・・幾つかのナメのプール釜。。。。。 渓屋風スパッツ着用遡行スタイルとなっている今日は、、、腰上高くまで水に浸かりながら、、、またある時は水面下の足掛かりを見付け、、、軽快に釣り上って行く。。。
いつの間にか、、、、秋ゼミのミンミン・・・がBGMに。
雲間から秋の爽やかな日差しが降り注ぐ、、、アメ色の水を湛えた大きな淵頭へ辿り着いて。。。
白泡まじりの強い水流が対岸の岩盤に沿って流れ下り、大きな底石がこの流れの先に鎮座している。。。
この流れを目指して、、、柔らかく12ヤード程のピンスポットで投射した ヘアカディス #16。
いつのまにか・・・毛鉤が流れ下って行く水面直下を追尾し、、、 そして、、、大きく反転しながら啄ばむ様に流れる毛鉤を捉えに出た大きな魚影。
大きな影は毛鉤を捉えるとそのまま白泡下に急速潜行して。。。
これを一拍半見送り、、、 ラインを滑らせるようにして、、、セットフック。。。
グウン・・・ッ !! 乗った。。。
白泡が消える辺りで巨きな白銀色が水面下に滲み、、、、、
強い流れに乗って、、、キリモミのような疾く重厚なローリングで下流へと突進する。。。
このローリングは山女魚だ ! しかも、、、デケエ。。。
R.L.Winston DL-4 7'6" #3 が大きく撓り込み、、、 グッグッ・・・というコシのある大型の山女魚の遁走へ応酬する。。。
この山女魚は、、、 記憶に沈めていた渓 『 20年間の大倉川 』 。。。 の化身のような、、、それは美しい魚でした。
帰路の橋上から。。。ふたたび、心の中で手を合わせ。。。
古い記憶にいる仲間へ「 無事・・・大倉の流れから戻ったよ。。。 美しく大きな山女魚が釣れたよ。。。 今日は付き合ってくれて・・・ありがとナ。。。 」と呼び掛けていたようです。
管理人がいつも心掛けている一節をお立ち寄りの皆さんにも。。。
■ 『俺は釣りが好きだから、命を賭けたくないんだよ。 死ぬと、釣りの時間が短くなるからな』
トラウト・バム / ジョン・ギーラック ◎東 知憲 訳 ( つり人社 ) より 一部抜粋
山女魚釣りにはその愉しみと共に、、、また、行動の際の危険も伴っています。
それぞれが永く釣りを愉しむ為に、、、 どうぞ、安全第一で、、、 良い釣り旅を。
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