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2007/10/27

銘無き竹竿~The Bamboo-Rod has no Name

 爽やかな秋晴れとなった朝、稲の刈り入れが終った宮城県北部の田園地帯をクルマは走る。

先ほどから、何処までも続いてゆきそうな曲がりくねった田舎道を背景に、道案内兼ドライバーのW氏と助手席に座る中国料理 楓林・ご主人S氏の和やかな毛鉤釣り談義が続いている。

 秋の柔らかな陽が差し込む川面にはコカゲロウの羽化が続いていることだろう・・・。  川から離れた田園地帯を走るクルマの後部座席に凭れウトウトしながらフト・・・鱒達の作るライズリングの連なる風景を思い返していた。。。

  

Dsc02391_2 田園地帯のどこにでもあるような集落へ差し掛かるとクルマは速度を落として、十字路そして五差路を抜け、、、更に田圃脇の農道を僅かに走り到着。

 大きな作業場と棟続きにある農家・・・そこが 『 Obara Rod 』 の工房だった。。。

クルマを止め、降り立つと、、、秋の陽が庭先に差し込み、そよと優しい秋風の通る静寂が僕らを迎えた。


挨拶もそこそこに近況を交えW氏そしてS氏との毛鉤釣り談義が進んで行くと、、、自分とは初対面のビルダー・小原氏もこれまで構えていた緊張をほくず様だった。。。

  「 この夏中、S氏より借受けて使ってみた Obara Rod 7’6”#4 が自分の釣りの内へ強く印象に残っていて、、、そんな竹竿を作る竿師に会ってみたいと思って・・・。 」 と自分の来意を告げると・・・・・。

  『 正直、自分は人との遣り取りが全く苦手で親しい人間とも話してみると、翌日は寝込むほど疲れるんです。 出来れば、自ら思い描くテーパー・デザインを削り、貼り、塗って組み付け、そして投げる・・・そんな理想とするアクションを目指す製作作業に自らを集中していたい・・・と願っています。 恐らく、3回生まれ変わるほど時間を費やしても、理想とする調子まで届かないと思いますが・・・・・。 』 と小原は穏やかに話し始めた。

 朴訥に語り進む話から小原が目指しているのは<道具として使い手に究極の扱い易さと楽しさをもたらす釣り竿>と伺えた。。。

  『 使ってもらった 無銘の7’6”#4 は自分がこれまで工夫した製作ノウハウを注ぎ込んだプロトタイプでコンパウンド・テーパーによる実戦的な調子の竹竿となっています。 一般的なカーボンロッドを使い慣れた釣り人には癖在る竿・・・振り易くは無い・・・に意図して仕上げてますが、毛鉤釣りで20シーズン以上数多くの現場経験を持つ方なら、この調子による必然性を理解頂けると考えていました。 しかし、そんな製作者の考えは、本来使用して頂きたいベテランの皆さんまで届いていないのが、、、現実です。  無駄な虚飾など一つも無い外見から・・・どうせつまらん竹竿だろう。。。と。  そんな事情もあって、この竿を35年来の毛鉤釣り師であるSさんへお譲りした訳です・・・ 』 とも。。。 

  
 Dsc02394
 「 実は、、、使ってみた自分も、このプロトタイプ 7’6”#4 をこれまで使用していた Hardy Graphite-Marvel の代わりの竿にと考えていて・・・仮に全く同じ調子と仕様で、僅かにグリップとリールシートを変更して作って欲しい・・・との依頼を受けてくれますか? 」、、、、、恐る恐る聞いて見ると、、、、、

 小原はやっと我が意を得たと・・・微笑んでみせ 『 では、工房に用意してある全ての素材と製作工程を説明しましょう。 それで納得頂ければ喜んで製作を引き受けましょう。 』。。。。。と


 線径の極々細い自製のガイド製作工程と2タイプあるメッキ処理について、、、始まり

 金属フェルールの素材選択と旋盤加工とメッキ処理~仕上げについて、、、

 リールシートの金属加工と銘木の選別~切り出し加工~3年に渡る乾燥処理~更に1年に渡る塗装仕上げについて、、、

 竹の選別、、、荒削り、、、仕上削り、、、(ホロー方法については秘密だそう)、、、貼り合せ、、、塗装工程、、、仕上げ、、、ラッピング糸の自家染についてまで、、、

 
 小原は休む事無く、熱の籠もった声で立ち寄り先のブース毎の説明を続けて行く。。。
澱み無く語られて行く竹竿の製作工程。。。それはまるで実際の製作作業を見ているように正確で緻密だった。。。

 本来、[ 部外者立ち入り禁止 ]である製作作業の各ブースに招かれて入った時の驚き!
割ったばかりの竹、、、そしてミリングマシーンと竹の切削クズの跡、、、仕上用の測定機材、、、バインディングが済み乾燥へと移る素材が待ち構えて。。。

そして、塗装ブースに何気なく置かれていた製作のキモとなるホロー用の何らかの機材。。。については口外無用と念押しが!  きっと、素人だからと・・・見せてくれたのだろう。。。

 仕上げのブースを除く製作工程を廻り終る頃には秋の陽も急速に西へ傾いており、ここで、やっと、、、昼食抜きで説明に聞き入っていたことに気付いたのでした。


 どうやら・・・自らの欲する釣竿へ賭ける情熱には、作り手そして使い手に食う事を忘れさせる程の得体の知れない魅力が備わっているようです。


 程なく、小原氏の工房を辞して帰り足に着いた車中では、穏やかな秋の夕日に照らされ無言の3人となっていました。  きっと、、、別れ際に 12万円・納期3ヶ月 と聞いた竹竿の製作条件をそれぞれがどうやり繰りしてみようか?と考え込んでいたのでしょう。。。

 いや、、、既に竹竿を片手に川辺で遊ぶ自らの姿を思い浮かべていたのかもしれません。

Dsc02373 秋空に写り込む大鱒とファイト中のS氏の勇姿とロードしている 『オバラ製竹竿』 の美しいベンディング・カーブ。。。遠く見えている奥羽の山並みでは今夕もコカゲロウが舞っているだろう。。。静まり返った川面を想い返していました。


 無銘の竹竿に込められた作り手の情熱は、新たな釣り心を呼び起こしてきたようです。
一本・・・行くか?!


 10月の良い釣り旅を。。。

 


 ■ Obara Rod
    TEL: 0229-45-2673
 

 

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